2021.06.29
【転職先選び】わたしに合ったインサイドセールス組織は? 〜タイプ別に考えるチーム選択〜
一口にインサイドセールスといっても、企業ごとに採用している組織タイプは異なります。
商材特性に顧客規模やビジネスモデル……はたまたセールス部門やマーケティング部門の組織文化や営業活動など、企業によってインサイドセールスの取り組み方は違ってきます。
大きくは、「分業型・混合型・完結型」の3タイプに分類されますが、本記事では、まずは新型コロナウイルスなどの影響によって変容するインサイドセールスの全体観をざっと見ていきます。その上で、それぞれの組織タイプの違い・特徴と仕事内容から、「どのような人が」「どのような型の組織に向いているのか」、また「どのようなスキルが身につくのか」などを紹介していきます。
インサイドセールスという職種へのキャリアチェンジを考えている方には、ぜひお読みいただきたいです。
では、張り切って参りましょう!
目 次
社会・ビジネス環境の変化とともに変容し続けるインサイドセールス
インサイドセールス(insidesales)とは、見込み顧客(リード)に対して、訪問せずに遠隔で営業活動をする手法です。
国内の文脈では、電話にメールやDM、Web会議ツールなどを利用しながら見込客(リード)と非対面でコミュニケーションをとり、対象と関係を作りながら商談を創出していく営業手法として知られています。
少し前の言葉で言えば「内勤営業」が近いのですが、営業が手を付けていないホワイトスペースの開拓や見込み客をフィールドセールスまたはアウトサイドセールスに引き渡すのが、インサイドセールス職への一般的な認識です。
しかし、新型コロナウイルスなどの影響によってインサイドセールスは「内勤か、外勤か」という勤務場所の文脈のみで語られるべきではなくなってきているのが現在です。
・労働人口減少による働き手の変化
・サブスク台頭による企業のビジネスモデルの変化
・インターネット上で情報収集を行い比較検討を行うようになった買い手側の変化
・テクノロジー進化による売り手側の営業手法の変化
加えて2020年の新型コロナウイルスによってお客さまに「会えない」「訪問できない」状況(新たな日常)になって「営業のDX化」が叫ばれるようになっているのが現在です。このようにいくつかの因果が重なってインサイドセールスの概念は、進化への変化・変容を遂げている最中にあります。
たとえば仕事内容の変化においては、インサイドセールスがマーケティングとセールス(新規営業)の中間で見込み顧客の精査・育成を行い商談機会の創出を行うだけでなく、失注や保留になっている企業のフォロー、商談自体のクロージングを行うケースも増えてきています。
【インサイドセールスの特徴】
・従来のマーケティングでは実現が難しかった、双方向のコミュニケーションが可能
・電話やメールなどツール活用により訪問時間を短縮。アプローチ数の増加が期待できる
・働ける場所や時間が限られてる方でも好きなタイミングで、家からでも働ける
・企業側は在宅ワーク可能な会社を探している方など、働き方に柔軟性を求める優秀な人材の確保につながる
・会議室の予約や移動時間などを考えず、比較的容易に商談を行える(商談サイクルが早い)
・セールスノウハウの共有を比較的簡単に行える
・インサイドセールスは、営業部門はもちろん、マーケティング部門やカスタマー部門など他部門にも貢献できる
そもそもインサイドセールスが進んでいる米国では「インサイド(内なる)」+「セールス(営業)」という言葉の通り、「潜在客へのアプローチから契約含む全ての営業フローをオンライン上で完結する役割」として認識されています。
本来はこのように全ての営業フローを社内で行う手法のことを指すのですが、実際のところ各企業内でインサイドセールス部隊がどの役割まで担っているかは様々です。
大きくは分業型・混合型・完結型と3つにわけられるのですが、これらを踏まえ次の段落から、それぞれのインサイドセールス組織とともに身につくスキル、どんな人が合っているのか、など諸々をご説明します。
【分業型】フィールドセールスに商談のパスを行うタイプ
では、まず現時点では最もオーソドックスな型から。
分業型は、マーケティングチームが獲得した見込み客に事前のヒアリングやアポイントの設定を行い、フィールドセールスにパスするまでが役割のインサイドセールスチームです。
商談からクロージングは、フィールドセールスが担当することになります。SDRチームとも呼ばれたりすることもあります。
商談が複雑になる高額商材やメーカーなどの場合、買い手側の多様な購買関与者と複数回のやり取りを経て、信頼関係を構築していく過程が必要になります。しかし、これを営業1人が見込み客の獲得から商談、クロージングまで担っていたのでは非効率です。
このような場合、インサイドセールスが電話やメールなどの手段を用いて、営業が商談に集中できるよう事前に見込み客への情報提供やコミュニケーションを図るなどして関係を育てることで、営業の生産性を向上させていきます。
見込み客を発掘するだけでなく、見込み客との関係の醸成、関心度合い検討や熟度を見極めまでが対応します。自分の営業活動に関する情報だけでなく、フィールド営業担当者の訪問前には一緒に資料を準備したり、どのような商談の進め方が適切かを話し合ったりすることもあります。商談を提供する営業部門との均衡が発生するので、部門間の連携コストは一定量発生します。したがって、「自分の範囲」以外の仕事も常に意識しておくことも大切です。
仕事内容とともにみる、分業型で身につくスキル!
下記は、インサイドセールス分業型の仕事内容の例です。
【仕事内容(例)】
・興味の高まった顧客とのアポイント調整、
営業担当と連携して提案資料作成
(実際の商談~契約は別担当者がメインで担当、主に前半工程を担当する)
・自主開催セミナー/イベントの企画・実施
・電話/メールによる課題ヒアリング
・見込み企業(リード)に対する営業活動/フォローアップ/商談創出
・過去に保留や失注となった案件の掘り起こし
・マーケティング部門と連携をした販促キャンペーンの立案と実行
・状況報告書の作成
・業務改善・効果的活動のための企画・ミーティング
分業型は、他のタイプのインサイドセールス職と比較して、単一業務に集中できる分、企業側も必要なスキル習得に対するトレーニングを積みやすいのが特徴です。特化したスキルを身につけやすいということでもあるので、スペシャリスト人材を目指す方にオススメです。
こうしてご説明すると、「1つの業務に集中する分、キャリアの幅が狭まりそう……」などの懸念を想う人もいるかもしれません。ですが、仕事内容(例)をご覧の通りフィールドセールスやマーケティング部門の業務ともまたがることも多く、キャリア形成においてインサイドセールスという職そのものの汎用性が高いので、スペシャリスト人材としてのキャリアだけでなく、営業部門やマーケティング部門などへのキャリアプランを用意している企業は多いです。
さまざまな部門とやり取りする中で、他の職種の面白さも見えてきたりと、職種を越境して形成するキャリアビジョンも比較的描きやすいので、その点においてはそこまで心配する必要はないでしょう。
分業型はこんな人が向いている!
昨今ではジョブ型雇用の広がりに伴って、社内で様々な部署・職種を経験するゼネラリストとしてのキャリア構築だけでなく、カスタマーサクセスのプロ(あるいは専門職)といったようにスペシャリストとしてのキャリア構築も一般化してきました。
一方で、市場価値は需要と供給によって決まりますが、インサイドセールスの人材市場はまだ未成熟であるためプロフェッショナル人材の絶対数が需要に対して圧倒的に少ないという状況があります。
その希少性の高さを踏まえて、インサイドセールスのスペシャリスト人材には今後さまざまな可能性があるでしょう。
例えば、インサイドセールスを深く理解していれば、その知見を生かして副業が可能です。高い専門性を身につけ、コンサルタントとしてインサイドセールス部門の立ち上げをサポートする道も考えられます。
電話でも訪問でも接客でも良いので、何かで量をこなして成果を出した経験がある。そこから最適解を導き出してきた経験がある。というような経験がある方は実務への適応も早く、現場での活躍の可能性は高いようです。コツコツ地味に努力して、専門性を突き詰めていきたい職人肌の方に向いています。
【完結型】インサイドセールスでクロージングまで完結するタイプ
社内にフィールドセールス担当者を置かず、インサイドセールスで完結するタイプです。Web会議システムなどを用いたオンライン商談や電話などを駆使して客先に訪問せずにクロージング(受注)まで全ての営業フローを担当します。
少ない営業リソースで成果を挙げなければならないスタートアップの台頭してきている。買い手のデジタル上での購買リテラシーが上がった。サブスクなど安価なサービスに買い手の購買の方向性がシフトしている。コロナ渦の影響により分業タイプや協業タイプが機能しなくなった。お客様のもとに訪問することが厳しくなった。……など、さまざまな影響から、フィールドセールスチームがインサイドセールスに加わり、オンラインでセールスを完結させようとする動きが増えています。
ほか昨今の働き方改革や働き手の減少などといった社会的な影響も、インサイドセールス完結型が増えてきている大きな要因です。採用企業側が大幅に営業コストを削減できる利点に加えて、社員の働きやすさなど上記の社会課題に起因する市場環境の変化も重なって、こちらのタイプを採用する企業は最近一気に増えました。
前述の通り訪問せずに、提案から成約まで全ての工程をOnlineで完結するので、協業型/分業型のインサイドセールスと比較して他部門との連携や調整、交渉の負担は少ないです。また部門内での役割が増えることから採用後に人材の教育コストに一定の時間を割く企業が多いのが特徴です。
またインサイドセールス完結型は、セールスに高度な専門知識を要する高額商材や、買い手の購買プロセスが特に複雑な法人向けソリューションを提供する企業にはあまり向きません。主にターゲット企業は中小ベンチャーかつ低単価で比較的商談期間の短い商材を扱う企業に導入されている様相です。
仕事内容とともにみる、完結型で身につくスキル!
下記は、インサイドセールス完結型の仕事内容の例です。
【仕事内容(例)】
・商談機会獲得のためのメール/電話やチャットによるアプローチ
・過去に保留や失注となった案件の掘り起こし施策立案〜要因分析
・見積書・提案書などの資料作成
・社内ソリューションの調整及び提案取りまとめ
・オンラインセミナーの実施
・SMB(中小規模企業)を対象とした商談・クロージング
※受注までのリードタイム(掛かる時間):平均1〜3カ月(WEB打ち合わせメイン)
※ノルマ:原則、個人ではなくチーム単位で設定
通常、どんな買い手にもボトルネック(あるいはスタックポイント)となる生涯のひとつやふたつはあるものです。
完結型では、こうしたネックを解決するとともに、商談でクロージングへと導き受注数を向上させていくわけですが、多くの場合、買い手側からネックを話してくれることはあまりありません。
ネックを無視して突っ走ってしまっても決して良い結果にならないので、経験を積む中では、まず買い手の隠れた課題を掬い上げていく洞察力やヒアリング力が自然と身につきます(完結型に限りませんが)。
その上で課題を解決する能力であったり、互いの落とし所を見つけるセンスであったり、適切なやタイミングで対象の背中を押せる「交渉力」が向上していきます。ときには、コンサルティングの要素を含めたセールスを行うシーンもあることでしょう。
また、セールスあるいは商談の本質は「人対人」ですが、Web営業ツールを用いた遠隔商談には「空気」が読みにくい、という性質があります。
対面であればその場の雰囲気や体の動きなどから「この人は、このあたりを懸念しているのだろうな」と感じられたことが、オンラインの商談では想像しにくくなっており、信頼関係を構築する難易度が対面と比べて少し高いです。
したがって優秀な方は関係作りを補完するため、多様なデジタルツールを利用する中で自身の人柄も共有しています。
売り手側のブランドとの関係であれ、個人との関係であれ、すべてのセールスの中心には必ず人間関係がありますが、こうしたデジタルスキルの活用も含めた受注までの一連のストーリー、いま求められるセールスの基本となる能力が全体的に身につくのが完結型のインサイドセールスです。
完結型は、こんな人に向いている!
基本となる営業スキルを備えたフィールドセールスなど法人営業の経験者は採用において優遇されます。
しかし、界隈の傾向として最近は、営業経験者だけでなく営業未経験者の転職も推奨されるようになってきています。
未経験者は経験者と違って、「オンライン商談で踏み込みきれない」「訪問に切り替えようとする」といった「オンラインセールスでは売れないのでは?」といった疑念や過去に成功体験に先入観がないから成果を出しやすいから、が理由なのだそうです。
したがって、ブライダルや飲食、ホテル業など異業種からの転職者も多く活躍しています。細かなことに気がつく力や関係を作るためのコミュニケーション能力、会話や表情の細部から相手の気持ちを読み取ることに長けているからです。
また、対面によらずデジタル上でクロージングまで完結するインサイドセールスは、今後しばらく加速することが予想されますが、そうした大きく環境下にあっては、変化に柔軟に対応できる方や新しいことにチャレンジできる方、与えられた環境以外でも自ら仕事を生み出す気概を持っている方など、新しい要素を積極的に取り入れて何か会社に貢献する意識を持っている人材は、採用企業に重宝されます。
時代の変化に即応し、新しい試みをして成果を出せるというのは、重要なコンピテンシーの一つです。
【混合型】状況に応じて役割を変える、分業型と完結型を組みわせたインサイドセールス
混合タイプのインサイドセールスは、前述の分業タイプと完結タイプを組み合わせた型です。
下記のように顧客や自社の状況に応じてその役割を変えていくのが、混合タイプのインサイドセールスになります。
・規模の大きい高額なサービスを提供する場合は、フィールドセールスにパスするまでをインサイドセールスの役割とする
・規模の小さい企業やサービスの一部の機能を提供する場合は、インサイドセールスが自分たちで成約まで決めてしまう
・フィールドセールスが顧客の対応に追われて提案にフォーカスできない場合は、インサイドセールスが対応する
・営業拠点のある大都市圏はフィールドセールスとの連携によって成約を目指す
・地方都市はインサイドセールスがオンライン商談によって成約を目指す
……といったように、「ターゲットとなる顧客の規模や地域が多岐に渡っている」「サービスの内容・展開が幅広い」「サービスの料金が顧客によって異なる」といった企業に多く導入されている状況です。
混合タイプを導入している代表的な企業では、例えばセールスフォース・ドットコム(Salesforce)がイメージを描きやすいでしょうか。
セールスフォース・ドットコムとはCRM(顧客関係管理)ツールを提供する、クラウドアプリケーションの分野で言わずと知れた世界的な外資系企業です。CRMツールに留まらず、企業の営業活動からサービス、Eコマース、マーケティング活動までをトータルで支援。サービスは、全業種対応型のホリゾンタルサービスなので、多岐にわたる業態・業界、あらゆる規模の企業が顧客群となっています。
セールスフォース・ドットコムにはアプローチ先が多岐にわたることから、全領域で網羅した幅広い提案力が求められる、という文脈がよく見られます。潜在顧客へのアプローチから商談機会を創出するに留まらず、顧客の経営陣との対話から、現状の課題から、事業における将来への潜在的な懸念を引き出し、仮説から具体的な解決策の提案に至るまでを担うシーンもあるようです。
仕事内容とともにみる、混合型で身につくスキル!
【仕事内容(例)】
・アプリケーション・ソフトウエア業界の市場調査/情報収集
・リレーションの構築と維持、案件発掘、接点創出シナリオの設計
・営業組織体制作り、成果管理
・顧客データベース管理/キーマン把握、顧客課題のヒアリング
・ビジネスモデルの分析、経営層に対するダイレクトなアドバイス
・電話/メールチャットなどで見込客への戦略的なアプローチ/商談機会を創出
・顧客にあわせたプロダクト/カスタマイズ/拡張性の提案
・過去に保留や失注となった案件の掘り起こし施策立案〜要因分析
・顧客からのプロダクトへの要望・課題の抽出/各部門へフィードバック
顧客分析に電話やメールでのアプローチはもとより、ニーズを掘り起こし、顧客の課題にあわせたさまざまな提案を試みていくシーンもあるかと思います。フィールドセールスをはじめとした様々な部門と密に戦略連携し、企業によっては経営陣への提案も含めた戦略的なアプローチを行うシーンもあるでしょう。と、同時に混合タイプは相対する部門によって予算や商談の獲得条件が変わってくるので、その影響を受けながらチームと連携するスキルが磨かれていくはずです。
しかし、様々な部門と連携しながら社内全体を俯瞰しながら仕事できる一方で、混合タイプを導入している他のタイプと比較して「他部門との板挟みになりやすい」「責任区分が不明確になやすい」などの課題が存在する場合もあります。そうした側面では大変なこともあるかもしれません。しかし、だからこそ社内の中枢で活躍を期待できるポジションで働くことができるのではないでしょうか。
したがって、他部門との連携するスキルを身につけなら、インサイドセールスに関わる多岐に渡る仕事を学び、対象のビジネスの核心に迫る高度で重要な役割を担っていきたい方におすすめします。
ちなみに混合タイプは、前述の分業タイプ/完結タイプと比べて業務や予算策定における設計難易度が圧倒的に高いので、比較的インサイドセールスチームが一定の成熟をしている企業に多く導入されている様相です。
混合型は、こんな人に向いている!
社内全体を俯瞰しながら、直接的にも間接的にもセールス部門全体に影響を与えるインサイドセールス人材へとパフォーマンスを高めていきたい方に向いています。成熟度の高い先進的な組織で自身を磨き、プロとして本質的なビジネススキルを培っていきたい方におすすめです。
最後に
以上、インサイドセールス組織のタイプ別に「仕事内容・身につくスキル・こんな人に向いている!」などをご紹介してきました。
それぞれの組織の違いを把握して、皆さんの転職先選びにお役立ちしましたら幸いです。
では、また次回。最後までご覧いただきありがとうございました。